旧約聖書翻訳委員会(岩波書店)
フランシスコ会 聖書研究所 訳注
主は天を押し下げて降りて来られた。その足元には黒雲。主はケルビムに乗って飛び、風の翼に乗って現れ、ご自分の周りの闇を仮庵とされた。それは水をたたえた厚い雲。
新改訳2017
主は、天を押し曲げて降りて来られた。 黒雲をその足の下にして。主は、ケルビムに乗って飛び、 風の翼の上に自らを現された。主は、闇をご自分の周りで仮庵とされた。 水の集まり、濃い雲を。
聖書協会共同訳
主は密雲を足元に従え、天を傾けて降り、ケルビムに乗って飛び、風の翼を広げて現れた。闇を周りに置き、雨雲と群雲を仮庵とされた。
ESV
He bowed the heavens and came down; thick darkness was under his feet.He rode on a cherub and flew; he was seen on the wings of the wind. He made sdarkness around him his canopy,thick clouds, a gathering of water.
NET
He made the sky sink as he descended; a thick cloud was under his feet. He mounted a winged angel and flew; he glided on the wings of the wind.He shrouded himself in darkness,in thick rain clouds.
22:12で「厚い雲」「濃い雲」「群雲」と訳されている言葉
重ねて用いられています
直訳的に訳すならば
”clouds of clouds”となるでしょうか?
では
何故、雲なのか?
雲は何を指し示しているのか?
これらの言葉が使われている背景には
おそらく以下の節があるのでしょう
主はモーセに言われた。「見よ。わたしは濃い雲(H5645, H6051)の中にあって、あなたに臨む。わたしがあなたに語るとき、民が聞いて、あなたをいつまでも信じるためである。」それからモーセは民のことばを主に告げた。...」
出エジプト記19:9
「エシュルンよ、 神に並ぶ者はほかにない。 神はあなたを助けるため天に乗り(H7392)、 威光のうちに雲(H7834)に乗られる。...」
申命記33:26
ところで
22:10で「密雲」「黒雲」と訳されているのは
「厚い」「闇」「暗黒」という意味のעֲרָפֶל `araphel(H6205)という言葉です
こちらは以下の箇所に用いられています
民は遠く離れて立ち、モーセは神がおられる黒雲(H6205)に近づいて行った。
出エジプト記20:21
そこであなたがたは近づいて来て、山のふもとに立った。山は燃え上がって火が中天に達し、闇(H2822)と雲(H6051)と暗黒(H6205)があった。
申命記4:11
今あげた三つの単語は
どれも シナイ契約と関連するものとして
そして
臨在を示すものとして
用いられています
そして
後に続く書にも
同様の表現が見られます
そのとき、ソロモンは言った。 「主は、黒雲(H6205)の中に住む、と言われました。...」
列王記第一8:12
主は闇(H2822)を隠れ家とし 水の暗闇 濃い雲(H7834, H5645)を ご自分の周りで仮庵とされた。御前の輝きから 密雲(H5645)を突き抜けて来たもの。それは 雹と燃える炭。
詩篇18:11-12
いにしえから 天の天を御される方(H7392)に。 聞け。神は御声を発せられる。力強い御声を。力を神に帰せよ。 威光はイスラエルの上に 御力は雲(H7834)の中にある。
詩篇68:33-34
雲(H6051)と暗黒(H6205)が主を囲み 義とさばきが御座の基である。
詩篇97:2
水の中にご自分の高殿の梁を置き 密雲(H5645)をご自分の車とし 風の翼(H3671)に乗って(H7398)進み行かれます。
詩篇104:3
いくつかの表現が
折り重ねられることによって
「神が共におられる」という 一つのことを描き出していく様は
とても 美しいですね
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