一昨年、住民全員がメンバーの自治組織「中津江むらづくり役場」を作った。合併前の村を復活させ、高齢化と人口減少にあらがう目的かと思ったら、事務局長の永瀬英治さん(58)は予想外のことを口にした。
「狙いは、村をいかにソフトランディングさせるかです」。死亡後の行政手続きや葬儀の段取りなどを講習する。移住者による人口増は目的にしていない。
刻々と近づく村の終わりを待つだけでは、と問うと津江さんは答えた。
「だって若い人にマッチングする働き口も買い物する場所もないですから。今いる人たちが穏やかに暮らすことを考えた方がいい」
人を増やす努力をしても、もう遅い。人口減の最前線にいる人々の多くは、そう気付いている。
「以前は駄目だった時のことを考えてはいけない雰囲気があった。だが今は後退してでも大切なものを守る方法を考えなければ」。住民がいなくなった「無住集落」を研究する金沢大学の林直樹准教授は説く。
「人口増をめざしても意味がない」と主張しているのが、愛知県新城(しんしろ)市の穂積亮次市長(67)だ。05年の国勢調査で約5万2千人だった人口は、10年間で5千人減った。県内の市で唯一、「消滅可能性都市」に挙げられた。
穂積氏は17年の市長選で「人口のV字回復」を主張する対立候補を批判して4選を果たした。「いずれは日本全国で減っていくのだから、自治体間の人口の奪い合いにしかならない」
新城市では人口減少を見越し、公共施設の廃止と統合も検討している。今年1月、シンポジウムで市民の意見を聞いたところ、「残してほしい」との意見が出た一方で、施設の廃止を認める声も上がった。
穂積氏は人口減をジェットコースターに例える。同市のように人口が減り始めた自治体はコースターの先頭で、後部の首都圏はまだカタカタと上っている。
「ある瞬間、最後尾の東京も含めて国全体が猛スピードで落下する。その前に地方分権を進め、地域に合った方策を自立的に立てられるようにしてほしい」。例えば新城市では、現役世代が減る分、高齢者の年金収入を域内で循環させ、その資金によって若者の起業を支える仕組みを作ることなどを考えている。
軽々にコメントできないほど
深刻で 気迫のこもった言葉...
備忘録として
書き留めておきたいと思います
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