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夏目房之介著『マンガと「戦争」』

 子どものころ触れた「戦争」イメージといえば、テレビや雑誌によるものだった。テレビのドキュメンタリーの、戦闘機が照準器のなかで撃墜される瞬間のブレた映像を、必死にみつめたおぼえがある。戦記マンガや、雑誌の戦争特集の図解なども当然読んだ。第二次大戦にかぎらず、空想上の「戦争」も含めれば、もっと多くの「戦争」イメージ(未来戦争や宇宙戦争)を楽しんだわけだが、いずれも映画、マンガ、テレビなどメディアの上でだった。
 そんなふうに私のなかには、じつに大量のメディア経由の「戦争」イメージがある。が、それはふつう「戦争体験」とはいわない。十〜二十代の多感な時期にベトナム戦争をテレビでみて、ずいぶんショックも受けたし、いろんな意味で影響も受けたが、それとて(むろん、さいわいにも)メディアの上でのことだ。他にも、多くのじっさいの戦争映像を同時代者としてみたし、今もみている。よくも悪くも私にとっての「戦争」とは、そういうものだ。
 戦後生まれはすでに日本の総人口の七割近い。日本の社会の大多数をしめる。ものごころついてから戦争を直接体験した日本人を、かりに敗戦時六歳以上とすると、九四年八月現在で、日本の総人口に対し彼らはすでに三割をきっている。つまり、現在日本人の多数にとって「戦争」とは、私同様にほとんどメディア体験なのだ。七割すべてが、ではない。大陸から引き揚げた人たち、近親が亡くなった人などは、直接戦闘を体験しなくても「戦争体験」者とみなしうるだろうから。
 それでも、時代がくだるにしたがって日本人の戦争観がどんどん中性的(ニュートラル)になっていくことはまちがいない。第二次大戦や朝鮮戦争も、メディアで回顧されるという意味ではメディア体験の仲間入りをしている。いいとか悪いとかではなく、事実としてそうなのだ。それを前提にして、マンガに描かれた「戦争」イメージの変遷を描けないだろうか。その角度から、私たちが当り前のように依拠している戦後という時代のイメージを、私なりにたどってみたい。それによって「戦争」が中性的になった時代の、ひとつの戦後史像をさぐってみたかった。

マンガと「戦争」』(講談社現代新書 1384), 講談社 1997. p.3-4




この本が書かれてから20年以上が過ぎました

今年で戦後74年

「敗戦時六歳以上」の方は

すでに80代に入っています


きっと

戦争体験者は

すでに総人口の15%を切っているでしょう







私は1980年代生まれ

ものごころついてから初めて「見た」戦争は

湾岸戦争でした


今では 偏向報道が疑われている油まみれの水鳥の写真を見て

これが 何故 戦争につながるんだろうか と不思議に思っていました












それから

10年近く経って

ナイラ証言の問題などを

大学で学ぶようになった矢先に起きたのが


そして

その後

立て続けに戦争が起こりました




ちょうど

イラク措置法の成立の時期と重なっていたため

ただ事ではない雰囲気を 肌で感じ取っていました




けれども

なんとなく

ピンとこない感じがしていました


それは

きっと

メディアの中の戦争にしか

触れていなかったからだと思います







「緊張感を感じられない時代さ

僕はマシンガンを撃ったことなどない

ブラウン管には今日も戦車が横切る

僕の前には さめた北風が吹く」

斉藤和義『僕の見たビートルズはTVの中』より


「青の濃すぎるTVの中では

まことしやかに暑い国の戦争が語られる

僕は見知らぬ海の向こうの話よりも

この切れないステーキに腹を立てる」

中島みゆき『僕たちの将来』


この二つは

それぞれ 高校生の時と 大学生の時に

よく聞いていた曲の歌詞ですが

悲しいかな

この言葉は

当時の私にとって

深い共感を呼ぶものでした

























そんな私の感覚を

良い意味で ゆさぶってくれたのは

漫画とアニメでした


小学生の頃から今に至るまで見続けているガンダムシリーズだけでなく

機動警察パトレイバー2 the Movie』や『PLUTO』からは強い影響を受けました


この作品に出会って

ようやく

湾岸戦争とイラク戦争に「リアリティ」を感じました

























もちろん

それが 虚構であることは

自覚しています


けれども

幸か不幸か

リアルとリアリティの溝を埋める術を

私は知りません


漫画にしろ

アニメにしろ

そして

ドキュメンタリーにしろ

メディアを通してしか

実感を得ることが出来ないからです


恥ずかしながら

それが 私の現実です




けれども

私たちの世代は

まず

その平和ボケの現実を

認めなければいけないのではないでしょうか?


そして

ぼんやり抱いている戦争のイメージを

素描してみる必要があると思います




眉間にしわを寄せて

睨みを利かせて

臨戦体勢を取れば

リアリストになれるわけではありません


どうすれば

健全な現実認識を養うことができるのか

現実的に考えていきたいと思います




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